舟橋純の控え帖

まずノートだ、そこに見たもの、思ったことのすべてを書き入れる。そののちに分類して秩序づけ書き写せばいい。思考の簿記であって、そうすれば物事の関連性と、そこから生じる解明とが、きちんとした表現を見るだろう。(『リヒテンベルク先生の控え帖』より)。そういうブログです。

読書録

ただ生きよ ――『シーシュポスの神話』読書録②

さて、前回の記事の続きを書いていこう。 junjacques.hateblo.jp 前回の記事の話を要約する。記事を書き始める前に見つけた三島由紀夫のインタビュー映像から、私は、『シーシュポスの神話』が書かれた背景には、戦争を背景にした身近な人の死と、のうのうと…

生と死の不釣り合い ――『シーシュポスの神話』読書録①

『シーシュポスの神話』を読み、いつも通り、さてどんなことを書こうかと考えていたところ、今日、こんな動画に出会った。 www.youtube.com 生前の三島由紀夫のインタビュー映像である。この映像の中で、三島は、敗戦の詔勅を親戚の家で聞いたとある。聞いた…

「買った本くらい読めっつうの馬鹿!」

読んできた本について、自分の言葉で語れるものについてはぼちぼち書いてきたが、たまには、読むのをやめた本について書いてみるのもおもしろいかもと思い、記事を書いてみる。 ただ、なにせろくに読まずにほっぽりだした本について書くので、内容のあること…

働きながら本を読んでいた人々は何を読んできたか ――『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆)読書録

タイトルと中身と主張が合っていない。それでいて一冊の本としてまとまってしまっている。そういう不気味な一冊が、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆、集英社新書)という本なのだ、というのが、まず私が述べたいことである。 タイトルは…

実存主義者バタイユ ――『戦後フランス思想』(伊藤直)読書録

ジョルジュ・バタイユの『文学と悪』を楽しく読んでいる。読んではいるが、バタイユが置かれていた状況をもう少し知りたい、そう思い、『戦後フランス思想』(伊藤直、中公新書)を手に取った。バタイユ個人の、いわばタテの流れは『バタイユ入門』と『バタ…

夕暮れ時の空へ帰りたい/疲れて、手をつないで ――『詩集 野笑』(小池昌代)読書録

『コルカタ』に続けて、次は『詩集 野笑』(小池昌代、澪標)を読んだ。タイトルの「野笑」は「のえみ」と読む。『コルカタ』については以下の記事に書いた。 junjacques.hateblo.jp いつも通り印象に残った詩をいくつか取り上げてみよう。まずは「丘」とい…

川底に沈みゆくもの ――『コルカタ』(小池昌代)読書録

以前、小池昌代の『屋上への誘惑』(光文社文庫)について書いたときに、以下の文章を引用した。 junjacques.hateblo.jp さて、そのようにして書いている途中で、普段見えなかったものを発見したような気持ちになることがある。発見というからには、もともと…

わたしなりのクルーズ ――『デッドライン』(千葉雅也)読書録

『アメリカ紀行』を取り上げた記事で、大学時代から千葉雅也の本を読んでいた、と書いた。 junjacques.hateblo.jp その大学時代、彼のトークイベントに行ってみたことがある。なににひっかけて行ったイベントだったのか、彼がどんなことを語ったのか、さすが…

二人の読書会へ ――『人文的、あまりに人文的』(山本貴光・吉川浩満)読書録

本を読むのは好きだけれども、読書会には参加したことがない。興味がないわけではないけれども、「この読書会に参加したい!」と思ったことがないのだ。いろんなところで読書会は開催されているけれども、そして興味がないわけでもないけれども、わたしを参…

人間的意味、続く世代、ある男 ――『プレヴェール詩集』(岩波文庫)読書録

あまりむずかしい主義主張をふまえた上で書いている詩人の詩は、読んでいても、わたしには、いまいちピンとこない。もちろん詩は、なんらかの意味の伝達が目的ではないにしろ、本当に混乱しているとしか感じられないような詩は、たいていの場合、読まれなく…

光を与える ――『新川和江詩集』(ハルキ文庫)読書録

他人の気持ちを考えて行動しなさい、とはよくよく言われることではあるものの、他人の気持ちなど、そう簡単にわかるものではない。だからこそ言葉によるコミュニケーションが大事、などというと、実にありきたりな話になってしまう。 けれどもこれが、雪の気…

寝ながら考える辺境人の文化 ――『日本辺境論』(内田樹)読書録

加藤周一によれば、 日本人とは、日本人とは何かという問を、頻りに発して倦むことのない国民である。 『日本人とは何か』(加藤周一、講談社学術文庫、p.8) 内田樹も同じ路線で話をすすめる。彼によれば、私たち日本人が、日本論や日本文化論を繰り返すの…

ものから照らされた自分 ――『屋上への誘惑』(小池昌代)読書録

小池昌代の『屋上への誘惑』を読んでいて、以下のような一節に出会った。 ことばの発生。――わたしは、なぜかうやうやしい気持ちになって、「ただいま」の出てきたあたりに眼をこらす。内圧がかけられて、止むにやまれず出てきたことば。一瞬の光をあびて、こ…

いったんの答え ――『日本人とは何か』(加藤周一)読書録

西洋人の書いた思想書なり哲学書なりを読むたびに、かすかではすまない違和感を抱いてきた。特にイギリス、フランス、ドイツの人々の書いたものは、あきらかに想定読者として日本人を考えていないものだ。それを自分が読むというのはどういうことか、疑問に…

失われた狭さを求めて ――『アメリカ紀行』(千葉雅也)読書録

大学生のときから、千葉雅也の本は読んでいて卒論の参考にもしたくらいだけれど、働きだしてからはあまりハードな哲学方面の彼の仕事よりも、日々更新されるTwitterの文章を楽しんでいた。 ひさしぶりにTwitter以外の彼の文章を読んだ。『アメリカ紀行』(千…

詩の楽しさがジャジャンカ ワイワイ ――『放課後によむ詩集』(小池昌代)紹介

こちらも、わたしが以前、amazonに書いたレビュー記事です。自分の備忘録もかねて、一応こちらにも転載しておきます。―――――――――――――――――――――――――――――――― 小池昌代さんの詩のアンソロジーを毎回たのしみにしている者です。 ご本人の詩集も、もちろん読んでい…

令和の枕草子 ――『あのころなにしてた?』(綿矢りさ)紹介

以前amazonのレビューで書いた文章を転載しておきます。けっこう力を入れて書いたものです。―――――――――――――――――――――――――――――――― この本は、後々必ず参照されることになるであろう、日本の日記文学の新しい金字塔です。いきなり褒めすぎだとお思いでしょうが、…

リヒテンベルクの読書論 ――『リヒテンベルク先生の控え帖』読書録

ニーチェの紹介がなければ、まずまちがいなく出会うことはなかっただろう本を読んだ。『リヒテンベルク先生の控え帖』(平凡社ライブラリー、池内紀編訳)だ。 ニーチェは以下のように言っている。 109 ドイツ散文の宝 ――ゲーテの諸著、とくにおよそ存在する…

読んだ本について堂々と語る方法 ――『読んでいない本について堂々と語る方法』(ピエール・バイヤール)読書録

二四五 選択における賞讃 芸術家は、自分が扱う素材を選び出す。その選択が、素材に対する芸術家の賞讃なのだ。 フリードリヒ・ニーチェ『喜ばしき知恵』(河出文庫、村井則夫訳、p.271) 二〇〇 書くことや教えることにおける注意。 やっとものを書いてみた…

イデア論の、一歩手前 ――『メノン』(プラトン)紹介

はじめまして。こちらの素敵な企画をお見かけしましたので、参加させていただきます。 https://note.com/piccolotakamura/n/nd0dfcc398d19 わたしが推薦したいのは、プラトンの対話篇『メノン』です。 この本のおもて表紙に書いてあるように、たしかに、この…

【読書ノート】『日本の思想』①

読んでいく本は、丸山真男『日本の思想』(岩波新書)です。この本の目的 この本の出発点は、丸山が外国人の日本研究者によく聞かれる以下のような質問だ。「日本のインテレクチュアル・ヒストリィ」を通観した書物はないか?」(p.2)。インテレクチュアル…